Brillia Tower 堂島内に配されている、「旅とアート」をテーマにセレクションされた作品の数々。それらは鑑賞を目的とした美術館、多くの人が行き交う広場や公共施設の展示作品と異なる、ひと味違った個性や趣があります。日常生活を彩り、人々の暮らしに寄り添うアート作品は、どんな観点から選ばれているのか。南條史生氏にアート監修者の意図や、そこに込められた思いに迫ります。
レジデンスのアートを監修するにあたり、これまで手がけてきた美術館での展覧会や広場のパブリックアートとはちがう考え方が必要だと思いました。日々の生活空間に置かれるアートは、「生活に寄り添う」必要があるということです。展覧会では明確なメッセージの発信が大きな課題となります。しかし、このプロジェクトでは、生活のなかで心に響くけれども、主張しすぎないことも大事です。またインテリア空間をデザインしているピエト・ブーンのテーストともマッチする必要があります。彼のデザインは比較的控えめで、どちらかと言うと侘び寂びにも通じるような、大人の色合いといえるのではないでしょうか。そこで毎日の暮らしのなかに配されるアートは、さまざまなシーンのなかで見ても、それぞれのシチュエーションにマッチし、寄り添うことができる作品がふさわしいと思いました。状況に応じて、見る人それぞれが、色々な読み取り方ができる多様性を持った作品ということです。たとえば空の色が変化していくような色合いのものは自然のメタファーを感じさせます。それらを連想させる作品は、作品に触れる人々も感情移入がしやすいと想像したからです。
また、たとえば外出時なら高揚感に繋がる作品。カラフルで、強い作品の前を通るたびに元気になるでしょう。それぞれの作品は平静心を得られたり、あるいは楽しくなったり、期待を持って次のことを考えられたり、ポジティブな気持ちになれるものが多いでしょう。一方、帰宅時は安堵感や親近感が必要です。同じ作品でも夕陽の差すロビーで体験すると、わが家に帰ってきたなとほっとする、そんなやすらぎや、ある種の懐かしさが得られるものに見えるかもしれません。見る人の時と場合に応じて、意味合いが変化する作品が望ましいと考えました。その結果、抽象的でシンプルな作品が多くなっています。
近代化した社会における生活のシステムというのは、効率や経済的な理由で組み立てられることが多いと思いますが、アートはそういった原理ではつくられていません。アートが生活のなかにあるというのは、生活に心のゆとりや遊びにつながる別な要素が加えられ、彩りを与えることができるということなのです。これまでの生活に、ある種の気持ちの安全バルブをつくってくれる効果も得られるのではないかと思います。また決められたルールのなかで仕事をしている人に、別な視点で創造的なインスピレーションを与えることもあるでしょう。
レジデンスの共用部というのは一種のパブリックスペースですから、駅前広場のアートと同じように考えることもできますが、今回のプロジェクトでは、それよりもっと個人の生活に目を向け、一人ひとりの日常生活に寄り添うところが必要だと考えています。それは優しさ、明るさ、生活の機微とつながる繊細さ、などを表象するでしょう。
今回のプロジェクトでは「旅とアート」がテーマになっています。旅を何で表現するかということは面白い課題です。旅というテーマに合わせ、人が旅先で遭遇する空や海、森といった自然の風景を連想させる作品を多く選んでいます。
たとえば2階では、動線も計算に入れ、最初は非常に明るい赤系の色を使った抽象画が2点並んでいます。夜明けと感じてもいいし、夕暮れと解釈していただいても構いません。その先には、青や緑系の作品が現れます。これは自然の象徴。空かもしれませんが森かもしれない。それから川や湖水のような流動的な作品へ。その次は透明なスーツケース。旅と直結した具象作品によって、旅人がここにいるような印象を醸し出します。
さらに空間の中央には、旅人を連想させる人の姿の彫刻を新たにコミッションする予定です。このように暗い色と明るい色、赤や緑といった対称的な色合いを全体にバランス良く配置しています。全体には渋いながらも、見ている人が多様性を感じるようなバリエーションとストーリー性を持たせて構成しています。
この地に長く暮らし、毎日行ったり来たりしていても、その時の気分で受け取り方が変わるでしょう。出かけるときに「今日はこの作品が応援してくれているようだから頑張るぞ」とか、帰宅してふと見ると「今日も頑張ったねと励ましてくれているようだ」とか、新たな気持ちで見てもらえたらいいなと思っています。その時々のシチュエーションで、アートが身近にあって良かったと感じられる時があるのではないでしょうか。もしかすると、作品を見て「旅に出かけよう」という新たなアクションへと誘ってくれるかもしれません。日常のなかに、気分を高揚させる少しばかりの異物が存在している。それがアートの役割、アートのある空間・住まいだと思っています。
かつて近代建築の始祖であるル・コルビュジエは「建築とは住むための機械だ」と唱えています。建築が合理的なマシンであった近代に、彼は機能がデザインを決める、機能がカタチを決めると考えていました。しかし今は違います。そこに真の豊かさはありません。現代では建築は、ライフスタイルのコンテナであって、そこで人がどのように生きていくかが重要になる時代です。そのライフスタイルとは文化や食、旅の豊かさなど人によって色々あるでしょう。それが一種のウエルネス=富にもつながります。今はそのような豊かさを享受する時代ではないでしょうか。そして、それを象徴するのがアートなのです。
「アートはインスピレーション、想像力の飛翔である」と言った人がいます。日々の暮らしのなかのアートが、何かのインスピレーションをもたらしたり、新たな生活のスタイルに発展したり、他者とのコミュニケーションのきっかけになったりすることで、きっと堂島の生活をこれまでにない豊かなモノにしてくれるでしょう。
■グランドエントランス完成予想CG ※掲載の完成予想CGは、計画段階の図面を基に描き起こしたもので、形状・色等は実際とは異なる場合があります。なお、設備機器、換気空調用の吹き出し、点検口、その他細部につきましては表現しておりません。また、家具・調度品は計画段階のもので実際とは異なります。アートはイメージであり、形状・色等は実際とは異なる場合があります。共用施設等のご利用にあたっては管理規約・使用細則に則っていただきます。
■ギャラリーコリドー完成予想CG ※掲載の完成予想CGは、計画段階の図面を基に描き起こしたもので、形状・色等は実際とは異なる場合があります。なお、設備機器、換気空調用の吹き出し、点検口、その他細部につきましては表現しておりません。また、家具・調度品は計画段階のもので実際とは異なります。アートはイメージであり、形状・色等は実際とは異なる場合があります。共用施設等のご利用にあたっては管理規約・使用細則に則っていただきます。
■43バー&ラウンジ完成予想CG ※掲載の眺望イメージ写真は、現地約160mの高さ(43階相当)の位置から西方向を撮影(2019年5月)したものに一部CG加工を施したもので、実際とは異なります。周辺環境は将来にわたって保証されるものではありません。眺望イメージ写真に合成した43バー&ラウンジ完成予想CGは、計画段階の図面を基に描き起こしたもので、形状・色等は実際とは異なる場合があります。なお、設備機器、換気空調用の吹き出し、点検口、その他細部につきましては表現しておりません。また、家具・調度品は計画段階のもので実際とは異なります。アートはイメージであり、形状・色等は実際とは異なる場合があります。共用施設等のご利用にあたっては管理規約・使用細則に則っていただきます。一部施設およびサービスの利用は有料となります。写真に合成した花火は、なにわ淀川花火大会を想定してCG合成したものであり、現地・住戸からの実際の眺望とは異なります。また、花火大会は今後中止となる場合があります。※43バー&ラウンジのご利用は、高層階(38階以上)の居住者様のみとなります。
■ザ・ペントハウス完成予想CG ※掲載の眺望イメージ写真は、現地約185mの高さ(49階相当)の位置から南から南東方向を撮影(2019年5月)したものに一部CG加工を施したもので、実際とは異なります。周辺環境は将来にわたって保証されるものではありません。眺望イメージ写真に合成したザ・ペントハウス完成予想CGは、計画段階の図面を基に描き起こしたもので、形状・色等は実際とは異なる場合があります。なお、設備機器、換気空調用の吹き出し、点検口、その他細部につきましては表現しておりません。また、家具・調度品は計画段階のもので実際とは異なります。アートはイメージであり、形状・色等は実際とは異なる場合があります。共用施設等のご利用にあたっては管理規約・使用細則に則っていただきます。一部施設およびサービスの利用は有料となります。