JR千葉駅から程近い三越千葉店の跡地で、
Brilliaのマンションを含む複合開発を進める、
千葉プロジェクト。
その建設現場を取り巻く仮囲いは鮮やかな
アート作品で彩られ、道行く人々の目を楽しませています。
この仮囲いアートの実現を推進した
東京建物CRM室室長の鹿島康弘氏と、
千葉プロジェクトのリーダーを務める
東京建物・住宅事業第二部の三谷和仁氏に、
仮囲いをアートで飾った理由や経緯、
評判などを聞きました。
―千葉プロジェクトの建設現場の仮囲いをアートで飾ることになった経緯は?
三谷 現場は2017年3月に閉店した三越千葉店の跡地で、JR千葉駅の東口から千葉県庁へと続く駅前大通り沿いにあります。この一帯は複数の再開発が進行中で、千葉市としてもこれらの開発を通じて大きな賑わいをつくっていこうという場所になります。
そうしたなか、千葉市の担当の方から「建設中も何か“賑わい”を創出できるような取り組みができないか」という打診がありました。仮囲いを引っ込めてスペースをつくり、そこで何かを行うといった空間的な余裕はありませんし、どうすればいいかを検討していたところ、仮囲いをアートで飾るという案が出てきて、「それでいこう」ということになりました。
鹿島 アート作品のプロデュースは福祉実験ユニットのヘラルボニーさんにお願いしました。ヘラルボニーさんは、主に障害のあるアーティストとライセンス契約を結び、アートをプロダクト化するなどの取り組みを通じて、福祉を起点に新たな文化を創造することを目指されています。
そもそものきっかけは、2021年4月に東京建物が運営企画を行うシティラボ東京を拠点として活動するCity Lab Ventures(※1)にヘラルボニーさんが参画されたことでした。
その後、彼らが掲げるボーダーレスで自由な考え方に共鳴した弊社のブルーモワ(※2)のメンバーが「せっかくのご縁なので、一緒に何かできないだろうか」と検討を始め、いくつかのコラボレーションを企画しました。そのひとつが今回の仮囲いアートです。
実はもともとヘラルボニーさんは全国各地で仮囲いにアートを展示するプロジェクトを展開しており、さらに撤去後のアート作品はトートバッグにアップサイクルするというサスティナブルな取り組みを行っていました。そうした実績があったところに、今回我々がコラボレーションさせていただいたという流れになります。
三谷 千葉プロジェクトの現場は隣接する街区も別の建設工事が進行中で、殺風景な工事現場が続いています。そうしたエリアにアート作品が飾られれば、街を歩いている人々にとっても良い環境になるのではないかと思いました。
仮囲いアートの計画を千葉市の担当の方に話したところ、「非常に良いですね。ぜひやってください」とおっしゃっていただきました。
プロジェクトを推進する立場としては、行政からの要請に応えることができ、その上、地元の方々にも喜んでいただける企画が生まれたことで、助かったという想いです。
―アーティストおよびアート作品の選定はどのように行われたのでしょうか。
鹿島 ヘラルボニーさんから候補作品をご提案いただき、そのなかから千葉プロジェクトの現場に相応しいと思う作品をセレクトしました。仮囲いに展示する作品は10点と数が多く、歩行者の方々が通行する間に連続してアート作品が出てくるような展示になるため、ひとつひとつが際立っているというよりも、全体の色味やバランスを考慮し、あまり主張しすぎないけれども印象に残る作品を選定しました。その結果、3名のアーティストの方々の計10作品を展示させていただくことになりました。
今回、選定させていただいたアーティストのおひとり、鈴木広大さんとは実際にお会いしました。鈴木さんの絵は指で描かれていて、力強くて色使いの美しい作品です。抽象的な絵なので観る人によって感想はさまざまだと思いますが、私自身は「とても素敵な作品だな」と思っていました。
鈴木さんとお会いしたとき、会話が困難なほどの障害がございまして車椅子に乗られていました。失礼を承知でいえば、「この方からこの絵が生まれたのか」と驚いたのが率直な印象でした。でも、一緒におられた施設の方が話しかけたり、手拍子をすると、鈴木さんも笑顔になって手拍子を真似したりして、そうした姿を拝見していると、ヘラルボニーの松田崇弥代表がよくおっしゃっている「障がい者だって同じ人間で、“可哀想”なのではなく“特性”なんだ」という言葉の意味が理解できたように感じました。
―仮囲いアートの評判や効果などについてお聞かせください。
三谷 アート作品を展示する前と後では一帯の雰囲気が大きく変わりました。とても華やかになったように感じます。通行される人々のなかには足を止めてじっくり作品を鑑賞されている方もいて、そういう様子を見ると、実施した甲斐があったと嬉しく思います。
鹿島 Brilliaではブランド活動の一環としてアートの公募展「Brillia Art Award」を開催し、その入賞作品を東京・八重洲の本社ビル1階で展示しています。これらの展示は外からも観ることができることから、街を彩るパブリックアートとしての一面もあると思っています。 今回の千葉プロジェクトの仮囲いアートもまさにパブリックアートとして楽しんで頂けたら嬉しいですし、実際に現場で作品を眺めている方々の表情を見ていると、一般的な仮囲いの告知広告とは違った感覚でご覧になっているように感じます。
いまはアートを楽しんでいただき、今後、ここに建つ物件のプロモーションが始まったときには「あのアート作品を飾っていたところがマンションになるんだな」と、より多くの皆さんに認知していただけるのではないか、そうした相乗効果にも期待しています。
また、社内の評判も良く、「とても良い取り組み」「面白い」などといった感想のほか、「どうすれば、仮囲いアートを行うことができるのか」といった問い合わせもありました。Brilliaブランドでアート活動を行う目的のなかには社員の成長という観点もあるので、今回の取り組みを見た社員たちが影響を受け、それぞれが担当するプロジェクトに活かし、さらに発展させてくれるような広がりが生まれれば、理想的だと思っています。
―千葉プロジェクトのアート面に関する今後の展開をお聞かせください。
鹿島 仮囲いでの展示を終えた後、アート作品はトートバッグにアップサイクルして販売します。今回のアート作品はターポリン生地に印刷しており、撤去後はそれを剥がして洗浄し、裁断を行ってトートバッグに仕立てます。ですので、すべて1点ものの貴重なバッグになります。
トートバッグはヘラルボニーのブランドECサイトと東京建物が運営するアートギャラリー「BAG-Brillia Art Gallery-」(東京・京橋)で受注販売します。現在、BAGではオープン記念展覧会としてヘラルボニーさんの「ヘラルボニー/ゼロからはじまる」を開催中です(2022年1月23日まで)。同展では過去にヘラルボニーさんがアップサイクルした同様のトートバッグも展示されていますので、展覧会にお越しいただければ、どのようなバッグになるのかをご確認いただけます。
三谷 仮囲いアートの後も、千葉プロジェクトではアートの力を活かしていきたいと考えています。現場は目抜き通りに面し、エリア一帯の再開発の要となる場所であるため、千葉市からも「人の流れをつくってほしい」という要望をいただいています。そこで、今回の仮囲いアートで体感したアートの力を活かしながら、街並みの新しい景観として、マンション計画に組み込めたら面白いのではないかと考えており、現在検討を重ねています。また、建設中のマンションの共用部などにアート作品を設置することも検討中です。
※1 サスティナブルへの貢献を事業の中核とするベンチャー企業によるベンチャーコミュニティ。東京建物が運営企画を行うシティラボ東京(東京・京橋)を拠点に、知見の共有、さまざまなコラボレーションの創出、経営課題の解決など、集団としての力を活かし、各々のビジネスの成長とサスティナブルな社会の創造の実現を目指していく。
※2 共感・対話・共創から生まれるあたらしい住まいづくりを考えるプロジェクトチーム。時代や価値観の変化に耳を傾けながら「住まいと暮らし」の両方をしっかりと見つめ、多様な価値観を理解し合い、対話を重ね、リアルな本音と向き合い、さまざまな商品企画やサービスを提供する。