世界屈指のミックスカルチャー都市、東京を舞台に、
アート、デザイン、インテリア、ファッションなど
多彩なジャンルをリードする才能が集結し、
都内各所でプレゼンテーションを行う
日本最大級のデザイン&アートフェスティバル
「DESIGNART TOKYO
(デザイナート トーキョー)2023」
今年のテーマ「Sparks 〜思考の解放〜」のもと、
過去最多となる108展示による作品・コンテンツが
世界中から集結しました。
その中で取り上げられたBAG -Brillia Art Gallery-の
対談をご紹介します。
―本日はDESIGNARTに初めて出展される「BAG -Brillia Art Gallery-」(以下BAG)についてのお話しをお伺いしたいと思います。最初に、お二人が手掛けられているお仕事とBAGの特徴についてお聞かせください。
東京建物 鹿島康弘
私は東京建物の住宅事業企画部CRM室という部署で、当社のマンションブランドである「Brillia」のブランド戦略を担当しております鹿島康弘(以下、鹿島)と申します。
BAGは立ち上げから関わっていました。
BAGは2021年の秋にオープンした当社のギャラリーで従前はLIXILギャラリー(旧INAXギャラリー、伊奈ギャラリー)として1981年から2020年まで40年にわたって街に愛されていたギャラリーでした。
ギャラリーのある京橋エリアというのは、もともと画廊が多くあるエリアで、閉廊の際は地域からも惜しむ声が多かったと聞いています。ギャラリーのあった建物自体は当社のビルで、再開発による解体が視野に入っていたためその後の活用を検討した際に、短期的な収益を求めて誰かに貸すというよりは、何か地域貢献に繋がるようなことができないかという声が社内から上がり、BAGをオープンしました。
彫刻の森芸術文化財団 齋藤由里子
私は彫刻の森芸術文化財団に所属しておりまして、BAGの企画監修に携わっております齋藤由里子(以下、齋藤)と申します。
このギャラリーは「暮らしとアート」をテーマに運営をしています。絵画や彫刻、メディアアートといったジャンルや作家の年代で区切ったりはせず、「暮らしとアート」という視点で幅広く作家や作品を選定しています。従って、今までも現代アートが中心ではありますが、写真や音楽、陶芸の作家さんもご紹介しています。扱う範囲が非常に幅広いので、私たちも毎回新しいチャレンジができて、そこに楽しみを見いだしながら企画をしています。
―東京建物ではBAGの他にも若手のアーティストを支援する「Brillia Art Award」や「Brillia Art Works」ではマンションの共有部分に設置するアート作品にも力を入れていらっしゃいます。例えばアワードで受賞された作家さんが、今後マンションの共用部に起用されたり、BAGで展示をされるなど、この3つの活動は連動してきたりするのでしょうか?
鹿島 現在、すぐにまだそういう動きはないのですが、今後は関連してくるかもしれません。というのも、社内で当社のアート活動を、Brilliaのブランド価値向上と目的を明確にして打ち出し始めたのは昨年あたりからで、まだまだ社内でも認知が足りていないからです。アート活動という意味では、住宅事業でマンションにアート作品を取り入れるような動きは昔からずっと行なっていました。
そうした経緯もあり、数年前から「社員の想像力向上」や「社会貢献」の意味合いも込めて、Brillia Art AwardやBAGの取り組みが始まりました。
ですが、活動を始めた当初は住宅事業との結びつきが見えづらく、何故デベロッパーがアートアワードやギャラリーを運営しているんだと、社内でも理解が得づらかったんです。そこで、当社のアート活動の意義を明確に打ち出そうということになりました。
Brilliaのオーナー様はアートに関心の高い方が多いということも数字から見えていたこともあり、当社のアート活動の目的として「Brilliaのブランド価値向上」という言葉を加えて明確に発信を始めたのです。
―なるほど。ホームページでは非常にわかりやすく提示されていましたが、そうした経緯があったんですね。
鹿島 その成果かどうかはわかりませんが、社員のアート活動に対する理解や関心がだんだん高まってきているのを感じています。特に今年に入ってからは、アワードで受賞された方のアートを使ってみたいといったような、アート活動にまつわる相談が明らかに増えてきています。なので、今後はそうした連携に発展することも十分ありえるかなとは思ってます。
―アートを起点とした京橋のまちづくりについて詳しく聞かせてください。
鹿島 BAG自体が40年地元で続いたギャラリーの場所だったということ、ガラス張りで道路に面してまちに開いており、歩いている人たちが気軽に入れる場所だということは、京橋のまちづくりにおいても大きな意味を持つと思います。 現在進行中の京橋の開発については、まだお伝えできない部分が多いですが、まちづくりにBAGとして関わることができたら非常に面白いと思いますし、たとえ開発エリアではなかったとしても、今までアワードやギャラリー等で積んできた経験や広げてきたネットワークを、我々が開発を多く担当している八重洲・日本橋・京橋エリアのまちづくりや住まいに活かせていければ嬉しく思います。
齋藤 現在BAGは3年目で企画内容を楽しみに毎回足をお運びいただく方も増えてきています。以前のギャラリーとはまた違う層の方も多く、まちに開かれたギャラリーとして新たな関係を構築し始めたように思います。
―企業の社会貢献としてのアート活動というのはなかなか利益的価値に結びつけづらく、社内外での理解を得づらいものだと思います。一方で、東京建物はアート活動を継続されており、何からの効果みたいなものもお感じなのかなと思います。そうした「暮らしとアート」の結びつきについてお聞かせください。
鹿島 建物の共有部分のアートの効果というのはなかなか伝わりづらいですし、コストダウンの対象になりがちです。 ですが、築5〜10年経った物件を改めて見に行ったりすると、やっぱりアートの力はすごいなと感じます。何がすごいのかというとなかなか言葉では表しづらいのですが。入居者の方にしてみれば、アート作品は毎日そこにあるものですよね。毎日の気分で作品との接し方も変わってくると思いますし、気にも留めていないかもしれません。でも、年数を重ねるごとに心に染み入ってくる部分はきっとあると信じています。
齋藤 私は仕事やプライベートにおいてもアートと生活は非常に密接な関係にありますが、アートはギャラリーで作品を買ったり美術館に行くだけではなく、広い意味で暮らしをクリエイティブにする“考え方”や“思い”なのかなと思います。 毎日の生活でインテリアを選んだり、料理をする時に器は何にしようかと考える。そのように身の回りの暮らしを豊かにしたいという気持ちがアートに繋がってくるのだと思います。Brilliaの入居者の方を想像しますと、嬉しい時や楽しい時、そうした日々の思い出と共に芸術作品がある。直接的な影響ではないかもしれませんが、感性を満たす要素として、そういうアートと人の関係はとてもうらやましいなと思います。