Brillia Art
Brillia Art Award

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No.16 
Brillia Art Award 2022作品・アーティスト紹介

TITLE:
Hopeful Monster
CONCEPT:
あなたの日常風景の中に潜む違和感に生命を与えると、それはどのような姿になるでしょうか?
恐怖や不安といった強い感情は儚く無形であり、向き合うことも抽象化することも、そして最終的には克服することも難しい。
そこで日本人は、不確実な現象を妖怪として具現化して表現し、コミュニティの中で共通概念として共有する方法を開発しました。
このプロジェクトは‘妖怪’のテーマを現代にアップデートし、神話や民族学的な観点から社会の中潜む違和感を考察したパフォーマンス・インスタレーションのシリーズです。
パフォーマーの身体の座標軸の傾きが加速度センサーと連動し、象徴化された“妖怪”が動き出し、変化します。
ドナ・ハラウェイは「サイボーグ宣言」(1990年)の中で、「機械と生物の混合体としての人間」を提唱しました。”サイボーグとは社会のリアリティと同時にフィクションを生き抜く生き物である。私たちの時代、神話的な時代、私たちはすべてキメラであり、捏造されたハイブリッドである”
現代のアイデンティティ、社会における性別の役割に対する不安をインスピレーションとしたこの作品の造形は、ギリシャ神話の中で異なる生命体に変身させられた女性の物語に由来しています。人々は、なぜ”畏れ”から、妖怪を生み出してきたのか。また、具現され共有化された妖怪は、現実を生きる人々にどのような影響を与えてきたのか。サイボーグとして現代に甦らせた‘妖怪‘を身に纏い、フィクションとリアリティを自身の身体を通して融合させることにより、その答えを探っていきます。

EMPLOYEE QUESTIONNAIRE

空間になじみすぎていない存在感やコンセプトをつい考えてしまうアウトプットの在り方がパブリックアートとしてよかったと思いました。
通りがかる人が一番「なんだこれは?」と感じるインパクトの強さと、見る人によって捉え方が様々あるであろう奥深さを感じました。
少し恐ろしさもあり、前を通る度必ず見てしまうような印象に残る作品でした。

ARTIST PROFILE

高島 マキコ / Makiko Takashima

アートにおける身体性を探求するメディアパフォーマンスアーティスト。プロダンサーとして活動後、身体と空間の関わりを探究するために渡英。時代に漂う不穏感・内在化された社会問題をコアに取り込み、テクノロジーを使って自らの身体性を通して問いかける。デザイナー、エンジニア、建築家、研究者など世界各地で様々な分野の人々と協働し、立体・インタラクティブアート・ワークショップ・平面・ 映像などを制作する。

Royal College of Art, MA Information Experience Design 首席卒
Goldsmiths University of London, Design&Philosophy 
ロンドン芸術大学Central Saint Martins, Performance art

AWARD
Nagoya Culture Foundation award 2022
Brillia Art Award by Tokyo Tatemono  2022
President’s  Special Prize Sanwa Art Award 2022  
1st Prize London Battersea Park Annual Sculpture 2017 
Rotary International Global Grant scholarship 2016 

EXHIBITION
Brillia Art Award,Tokyo Tatemono Brillia Lounge ‘THE GALLERY “ 2022
Osaka kansai international art fair, Osaka 2022
SPIRAL SCIF, Tokyo 2021
Any tokyo, Kudanhouse, Tokyo 2019 
Open sense festival, London 2018
Battersea park Public sculpture, London 2017
Victoria and Albert Museum, London 2017 
Science fiction Piccadilly circus, London 2017  他

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
A:立体やインスタレーションを長期的に展示できる機会を国内で探していたところ、ガラス貼りの半屋外で、時間帯や季節によって展示環境や表情の変わる空間の面白さに惹かれて応募しました。展示機会を頂き感謝しております。

Q:どうやって企画を考えたのですか?
A:原体験をコアとして思想の歴史的背景、文脈を文学・歴史・心理学・哲学・科学などを通して調べました。そして関連する専門家からのインタビューやワークショップを通して思考を結晶化し、そこから展開し表現できるメディアやマテリアルを選択するというアプローチを取りました。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
A:”Hopeful Monster” は数年前にイギリスで制作した” Yokai-Monster”のテーマをアップデートし、不条理・畏れの集合的無意識を考察したパフォーマンスインスタレーションです。
大学では哲学・社会学を勉強していた為、私の作品は個の集合意識を民俗学的神話のモチーフへと昇華させたり、社会的な視点、詩的な発想をテクノロジーや身体性を使い還元する表現を特徴とします。この作品は、生活の中で感じた違和感を、加速度センサといった装置により、装着可能な「サイボーグ」として、現実世界の中に実体化しました。
思想・社会・経済・人間的なものが交差する中で、固有のアイデンディティを取り入れて進化する、そんな作品が今後も作っていけたらと考えています。

Q:実際に作品を完成させた感想をお聞かせください。
A:東京の空の下では温度・湿度・光が違い作品の印象も変わるために、前回の作品から造形の色や形も発展させました。その効果が表せられていたら良いと思います。夜になると、Monsterがゲージの中から抜け出し、東京の街を徘徊する。。そんなパフォーマンスもできたらと思っています。

EVALUATION

小山 登美夫
(小山登美夫ギャラリー代表 / 日本現代美術商協会代表理事)

高島さんのHopeful Monsterは、八重洲の街の真ん中で、ゆっくりと準備をしているアスリートのように呼吸を整えている感じでした。
この平和な社会にもいつも隠れている恐怖をとてもうまく表現していています。ゆっくりとした微かな動きにはとてもリアリティーがあって、その表面の素材感も周りとの違和感を生み出していて、素晴らしい体験を見る人に与えると思いました。

野老 朝雄
(美術家)

新しい妖怪は黒い色から赤い色に変わったという。黒と赤が共存したら恐ろしく見えるのかもしれない。今年の2月24日から私(たち)は色やその組み合わせに関しても恐る恐る思考を巡らせる。
息を吹き込まれた作品によるパフォーマンスは見る側のコンディションで恐怖を感じたり、ユーモラスな印象をもたらす。小さな子供達にも感想を聞いてみたい。大人気であろう。
妖怪は小さな演劇の場所を作る。街のショーケースは劇場になり得る。もう妖怪は増殖しているのだろうか。沢山の妖怪達による群舞を想像する。都市は新しい妖怪を必要とする。

坂本 浩章
(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団 東京事業部 部長)

アートを非日常的という言葉で表現されることが多いが、まさにこの作品は日常の中に現れた“非日常”ではないだろうか。あらゆる事象に宿る妖怪が具現化されてきたが、この作品は、都会の日常で何を伝えに来たのかと思いを馳せる。都会の景色の中に出現した異様な造形と、鑑賞者が同じ空間を対峙することで、実際には見えない恐怖や不安を覚えるが、よく見ると生きているように呼吸をしており、別の世界ではなく日常であることに気が付き、現実世界に潜む表裏が同時進行していると感じさせられた。

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