日下さんの作品には、蛹から蝶が飛び立った後に下にちょっと出てくる汁のように作品の下に茶色い塊がある。卵、幼虫、蛹を経て成虫として空に旅立つ姿は何回か見たが感動ものです。日下さんの幾重にも繋がれた布自体の生成にも時間が必要だし、制作にも時間がかかっていく。そこに生まれる有機的なライン、動きもやはり自然と繋がっているようで、この街中のショーウインドーの中に新たな命が生まれたかのようなエネルギーが伝わってきます。
この革命の真っ只中、人工知能との付き合い方で右往左往している側としてこれを書く。そのような現在においても自らハードルを上げ、手を持って考え、手数を増やし、制作の道筋そのものを開拓していく作家とその作品に出会うことは幸せである。[アパレル]や[造形]などの閾/敷居を飛び越え、どんどん増殖しますように。
アーティストにとって“ものづくり”は糧であり、自らの存在意義の証明となっている。そして、作者が毎日、欠かすことなく種を生み出す行為によって、作品は一つの華となり実となって形づけられていく。展示からは、吊り下げられた色鮮やかな作品とは対象に、床に置かれた腐食したような色の作品との関係から、作者自身が紡いでいる人生の詩が連綿と続く日常の繰り返しを表しているかのようで、鑑賞するものに対話を求めているように感じた。