松永さんの作品は、街中ではっと目を引くほど目立っていました。カラフルなその色合いに引き寄せられると、そこには温かい触感の布に覆われたいくつもの植物の種子が芽吹いたというか、ひょっこり目をだした生物のようなものがひしめき合い生きていて、その感じが、頼もしくもあり、楽しそうでもあり、、元気が出てくる光景でした。美術でダイレクトに人に伝わってくることの大事さを確認しました。
情報に溢れた現代社会では、感度を落とさないと生きづらい時もある。/松永 有美子(ARTIST VOICE より)ここでは [ 感度を落とす ] という表現が選ばれて記述されているが、我々は老化と共に自己防衛の手段としてその方法を得ていくのかもしれない。もしくは幼少時の [ 感度 ] はもっと素敵なものであったのではないか。あたかも自分が、例えばカラフルなおもちゃの世界のような別次元の中に入っていけるのではないか、とも思わせられる不思議な感覚。特に子供達の目線の高さに於いて、しばらくの間我々はこの作品の前で少し優しい気持ちを思い出すことが出来るのかもしれない。膨大な情報を処理しきれない疲れた大人達にも当作品はそのような事を想起させる力を持っていると思った。
展示スペースを埋め尽くすかのように、種子や妖精を思わせる異なったサイズのオブジェが、幾何学形態の街の中に軽やかな動きを与えている。難解ではない形と色だからこそ見るものが感情移入しやすく、作品を通じて年齢や性別を問わず対話が生まれてくるようだ。まさに、作者が意図した「人と作品とのコミュケーション」によって、さまざまな境界線が取り払う空間を実現している。