Brillia Art
Brillia Art Award

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No.22 
Brillia Art Award Cube 2024作品・アーティスト紹介

TITLE:
Through Line
CONCEPT:
ショーウィンドウという空間は、建築的には内部に存在しながらも、外部の世界と繋がる接点であり、都市景観においては余白のような存在です。
このユニークな空間の魅力を、ネオンによる特別な線で描き、内/外、平面/立体、表/裏といった対立する要素を調和させたインスタレーションとして表現します。柔らかくも鋭いネオンの光は、ショーウィンドウの枠を越えて外部へと広がり、この街を行き交う人々と共に、一回性の景観を生み出します。

ARTIST PROFILE

市川 大翔/ TAISHO ICHIKAWA
<略歴>
2014年 早稲田大学 社会科学部卒業
「メディウムとしての光」「手工芸の技術」を軸に、ネオンサインの特性を活かした作品の制作、バーナーワークを手がける。
表現手法として、3DCGを用いるなど、移りゆく鑑賞体験や価値観の変化に、アナログ・デジタル双方からアプローチする。
<受賞歴>
2021年
「LUMINE meets ART AWARD 2020-2021」 オーディエンス賞
2022年
「KAWAKYU ART Exhibition 2022」 審査員推薦アーティスト
<活動歴>
2022年
SICF23(SPIRAL 表参道)
2022年
「KAWAKYU ART Exhibition 2022」 (川久ミュージアム 南紀白浜)
2023年
個展「Diffusion」 (DiEGO 表参道)

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
THE GALLERYの3面ガラス張りの広い空間と、多くの人々に作品を見ていただけるであろう、恵まれた立地に惹かれました。
普段、制作しているネオン管を使った作品は平面的なものが多いのですが、この立体的な空間では、今まで試みたことのない新しい表現に挑戦できると感じ、応募をさせていただきました。

Q:どうやって企画を考えたのですか?
ショーウィンドウという空間の都市における役割とそのユニークさに着目しました。建築物の内部にありながら、外部に開かれているこの境界的な場所の魅力を、サイトスペシフィックな作品として表現したいと考えました。
内側の空間の象徴として、部屋のモチーフが決まり、そして、部屋の外側についたカーテンによって、鑑賞者の見ているショーウィンドウの外の空間を「内側」に変えるなど、テーマを表現するギミックから全体の構想が形作られていきました。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
ネオン管を曲げて加工し、点灯させるまでの一つひとつの工程に強い思い入れがあります。技術的なオリジナリティをどのように作品に反映させるかが課題の一つでした。
ネオン管は一本の線であり、その線を表裏に行き来させながら加工していきます。平面性と立体性を併せ持つネオン管ならではの特徴を、立体的なモチーフの表現や、平面から3次元へと広がる表現を通して作品に取り入れることができました。技術的な挑戦としても、大きな成果を得られたと思います。

Q:実際に作品を完成させた感想をお聞かせください。
実際に作品を設置すると、3面のガラスが互いに反射し、合わせ鏡のように空間が広がり、予想外の演出効果が生まれました。無事に形にできたこと、この場での偶然に出会えたことがとても嬉しかったです。設営中は、ショーウィンドウの外を行き交う人々の多さと街の賑わいを肌で感じ、改めて素敵な展示場所だなと思いました。作品のネオンの光が、この街の景観の一部になれることがとても楽しみでした。自分にとっては大きい規模の作品でしたが、今回の制作を支えてくれた皆さん、そして本作品を選び、貴重な機会を与えてくださった関係者の皆さんに、心から感謝を申し上げます。

EVALUATION

小山 登美夫
(小山登美夫ギャラリー株式会社 代表取締役/日本現代美術商協会副代表理事)

夜の街に一筆書きのような部屋がネオンで作られて光り輝き、ガラス面に反射して、透明な未来っぽい空間が街中につながっていく。正面の3次元のイメージが、側面でも同じイメージを2次元(?)にしていて視点がちょっと戸惑う感じも面白いです。窓のカーテンが風をはらんで揺れている様もこんなにポップに感じられて、日常の空間が素敵に表現されていて、素晴らしいです。

橋本 和幸
(東京藝術大学 美術学部デザイン科 教授 兼 芸術未来研究場 瀬戸内海分校プロジェクトリーダー)

ネオン管がもつノスタルジックな雰囲気と外と内の関係を曖昧にした空間構成がよく計算されています。「あれ?中はどうなっていたっけ?」と確かめたくなり、見る人を飽きさせない仕掛けと魅力があります。とくにカーテンが揺れている側の不思議な感覚には何度も見てしまいました。すぐスマホで写真を撮ってみる現代の鑑賞形態を逆手に取った楽しさがあります。

遠山 正道
(株式会社スマイルズ 代表/株式会社 The Chain Museum 代表取締役)

カテランが生のバナナをガムテープでホワイトキューブに貼ったのは記憶に新しいが、そのバナナはウォーホールのベルベットアンダーグラウンドの、と言いだすともう作者の思うツボなのだろう。四の五の言わずに、この作品を買って、自分が経営するバー或いはこの作品のために作ったバーに灯して、酔客の話題を引き出す装置になる、のが一番ピュアで作品にとっても幸せな有り様なのでしょう。

坂本 浩章
(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団 東京事業部 部長)

20世紀初頭、パリで発表されて以来、数多くのサイン広告として使用されたネオン管を用いたこの作品は、ガスによる有機的な発光がレトロでもあり、現代では新鮮な輝きを放っている。部屋を見立てた立体物の内外に形取られた家具等は、柔らかい光の曲線で描かれていて、角度によって重なり合いながら空間に変化をもたらしている。眺めている鑑賞側が部屋の中に入り込む錯覚を覚え、移り変わる周囲の景観とともに懐かしい時間の中に導かれていく気持ちになった。

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