夜の街に一筆書きのような部屋がネオンで作られて光り輝き、ガラス面に反射して、透明な未来っぽい空間が街中につながっていく。正面の3次元のイメージが、側面でも同じイメージを2次元(?)にしていて視点がちょっと戸惑う感じも面白いです。窓のカーテンが風をはらんで揺れている様もこんなにポップに感じられて、日常の空間が素敵に表現されていて、素晴らしいです。
ネオン管がもつノスタルジックな雰囲気と外と内の関係を曖昧にした空間構成がよく計算されています。「あれ?中はどうなっていたっけ?」と確かめたくなり、見る人を飽きさせない仕掛けと魅力があります。とくにカーテンが揺れている側の不思議な感覚には何度も見てしまいました。すぐスマホで写真を撮ってみる現代の鑑賞形態を逆手に取った楽しさがあります。
カテランが生のバナナをガムテープでホワイトキューブに貼ったのは記憶に新しいが、そのバナナはウォーホールのベルベットアンダーグラウンドの、と言いだすともう作者の思うツボなのだろう。四の五の言わずに、この作品を買って、自分が経営するバー或いはこの作品のために作ったバーに灯して、酔客の話題を引き出す装置になる、のが一番ピュアで作品にとっても幸せな有り様なのでしょう。
20世紀初頭、パリで発表されて以来、数多くのサイン広告として使用されたネオン管を用いたこの作品は、ガスによる有機的な発光がレトロでもあり、現代では新鮮な輝きを放っている。部屋を見立てた立体物の内外に形取られた家具等は、柔らかい光の曲線で描かれていて、角度によって重なり合いながら空間に変化をもたらしている。眺めている鑑賞側が部屋の中に入り込む錯覚を覚え、移り変わる周囲の景観とともに懐かしい時間の中に導かれていく気持ちになった。