『クスッ(笑)』となる作品、これが私の土台。
ちょっと可笑しく、ちょっと可愛く、ちょっと間抜けだったりすること。
その土台を丁寧に美しく描くことで妙な魅力が増し『クスッ(笑)』が引き立つ。笑うことは楽しく、元気になり、頑張る気力を与えてくれる。なので、絵を観てくれる人や自分自身も『クスッ(笑)』となるように、私は描く。
2005年東京芸術大学デザイン科入学
2009年東京芸術大学デザイン科卒業
最近の絵のテーマは『可笑しなことを丁寧に美しく描くこと』である。
可笑しなことを真面目に描くことで妙な空気が出来上がり妙な作品になるのである。
2023年
2023美の起源展 奨励賞
2022年
「FM802/FM COCOLO DIGMEOUT ART CALENDAR 2023」 ビジュアル制作
作者の加藤さんの根底にはユーモアがあって緊張感を強いらないところが好きだ。
この絵を見て私が感じたのは、「富士山と雲海、縁側など、日本が持っている風土や文化を次世代の担い手である高校生がどう受け止めて、どう世界に羽ばたいて行くるだろうか」というストーリーでした。
日本人の人格は一朝一夕に形成されたのでなく、悠久の年月を経て日本の風土、文化を吸収し、心に刻んで育ってきたのです。素晴らしき日本の若者よ、私たちと一緒に世界を平和に導く一人になろうではないか。
縁側に寝そべって雲海を眺める女子高生。そしてそれを眺める私達、という「絵の中に絵がある」みたいな二重構造を持っているこの作品。もしかして鑑賞者である私達も誰かに観察されていて、その人もまた誰かに、、と入れ子状に世界は続いているのかもしれない。。などと、色々と想像してしまうのは、この絵の完成度の高さ故だろう。一見相反する各要素が絶妙にデザインされ、丁寧に描写され、互いに緊密に調和し、私達に隙のない白昼夢を見せてくれる。
特に黄色と白を基調とした全体を、富士山と髪の毛の黒がピリッと引き締めているのはカッコ良い。レモン色の空は、日本画によく使われる金箔とはまた違う軽みを絵に与えている。富士山よりも高いところに設定された視点も、浮遊感の理由だろうか。絵の中の雲海に、飛び込んでみたくなる。
寝そべる女子高生の眼前には横山大観「雲中富士」のような光景。くつろぐ場所は天界か、あるいは超高層マンションか。彼女の想いは計り知れぬが、その想いの先は決して辛くないと想起させる色使いと雄大さが、観る側の気持ちを軽やかにする。描くことと真摯に向き合ってきた事が伺える構図や筆使いの中に、制作のテーマとしている「クスッ(笑)」が潜んでいる。日々の生活も「クスッ(笑)」があるから真摯に生きる事ができるのかもしれない、と作品を前に口元が緩むのを感じた。