Brillia Art
Brillia Art Award

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No.02 
Brillia Art Award Wall 2024作品・アーティスト紹介

TITLE:
monodramatic /
double standard

CONCEPT

元々演劇活動をしていた髙倉による、誰しもが持つ「わたしの物語」を、
自分の中に渦巻く様々な選択可能性や役割、立場など多面的な
「わたしたち」によって表現する、
一人芝居をモチーフとした写真作品シリーズ。

ARTIST PROFILE

髙倉 大輔 / DAISUKE TAKAKURA

<略歴>

1980年、埼玉県生まれ、東京都在住。立教大学法学部法学科卒業。
演者として舞台活動をした後、写真制作をはじめる。
同時にデザインにも携わり現在は、写真作家としての活動を主軸に、
様々な視点から幅広く制作を行っている。

<受賞歴>

2013年
「御苗場 Vol.13」
2014年
「Lens Culture Visual Storytelling Awards 2014 finalist」(米)
2015年
「Young Portfolio 2015」
2018年
「Review Santa fe」(米) 選出
2020年
「Critical mass 50」(米) 選出

<活動歴>

2015年
fotofever』 Carrousel du Louvre / パリ
2015年
Brave New World』 DOX / プラハ
2018年
fotofever』 Carrousel du Louvre / パリ
2018年
ART CENTRAL 2018』 Central Harbourfront / 香港
2019年
髙倉大輔個展 『clerestory』 TEZUKAYAMA GALLERY / 大阪
2019年-2020年 『SOU JR總持寺アートプロジェクト』 JR總持寺駅 / 大阪
2021年-2022年 『渋谷二丁目アートプロジェクト』 渋谷アクシュ工事現場仮囲い / 東京
2023年
CADAN 現代美術2023』 WHAT CAFE / 東京
2024年
写真批評 復刊第2号』(東京統合写真専門学校出版局) 東京国立近代美術館・小林紗由里評掲載

2025年5月31日-6月28日 髙倉大輔個展 『omni prism』 TEZUKAYAMA GALLERY / 大阪

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
年齢制限がなく、また平面作品であれば写真作品での応募も可能だったことが、応募のきっかけとなりました。また写真作品で応募するにあたり、審査員に写真家であるハービー山口さんがいらしたことも後押しとなりました。

Q:この作品を作ろうと思ったきっかけは?
今回の作品は、作家活動を始めた初期から作り続けている
monodramatic(モノドラマティック)という作品シリーズの一作品で、以前開催した自分の個展のために作ったものです。
その季節、タイミングで話を伺ってみたいと思った被写体の方、そしてそのエピソード、背景となる撮影場所のイメージなど、それら全てが重なったことが制作のきっかけとなっています。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
人には様々な側面があり、常に自分の中にある幾多の選択肢を選びながら歩を進めています。その選択肢であるそれぞれの“自分”同士がコミュニケーションをとり、葛藤をし、今ここにいる“自分”が選ばれていると感じます。どの選択肢が正しかったのかを判断するのは難しく、選ぶことができなかった“自分”も否定することはしたくないなと思うのです。被写体の女性は撮影当時、活動を続けてきた演劇を続けるか、就職をするかで迷っていました。結果として彼女は就職をしました。演劇の制作会社でのお仕事です。彼女がその選択をするまでにどんな過程があったのかは知りません。しかし就職の話を聞き、どっちもやることにしたんだ!と驚き、嬉しい気持ちになった記憶があります。選択肢は可能性であり、“人が持つ可能性”もこのシリーズの一つのテーマです。タイトルにある“double standard”には、矛盾を含むネガティブな意味合いもありますが、それぞれの選択がその人にとっての正解であるといいな、という思いを込めています。

EVALUATION

ハービー・山口
(写真家)

桜が咲く季節、人々は冬を抜け新たな希望を探して歩み始めます。
この作品の中には黄色いセータを着た同一女性が多数登場しています。彼女は時に悩み、時に人を励ましたりしながら少しずつでも人生の坂道を登ろうとしています。そして様々な人々が自分の人生の中を通り抜けていきます。それは過去の自分かも知れないし、どこかで出会った不特定多数であるかも知れない。一枚の画面の中に、悩みつつも、より目標に向かって生きていく私たちの人生の縮図が語られているのです。

曽谷 朝絵
(美術家)

団地と桜と石垣、というリアリティのある舞台が新鮮でした。
絶対に見たことがある光景なのに、とても美しく見えます。
なんでだろうと考えてみると、まず構図が素敵です。画面全体に張り巡らされたジグザグを目で追っているうちに、そこに配置された様々なポーズの女性の動きを、パラパラ漫画のように脳内で映像として合成することができます。
そして画面の中で様々な階調やコントラストが存在しているのも、この写真の豊かさに寄与していると思います。画面上方は団地を背景にした桜という、白っぽい中での繊細な階調です。それがジグザグに乗って画面の下方に視線を移すに連れて明暗が逆転していき、暗い背景の中で女性の白いシルエットが浮き出す強いコントラストになっていきます。
そんなふうに画面の中の散歩を楽しんでいるうちに、過去の自分も未来の自分も同時に引き連れて、迷いながらも勇敢にそして淡々と歩いていく彼女に、感情移入してしまいます。
春は迷いの季節であり門出の季節でもあります。こんな気持ちで、誰もが春を迎えているのかもしれません。

齋藤 由里子
(公益財団法人 彫刻の森芸術文化財団)

写真は目で見たものを写す表現手段だという概念だけでは語れない作品と感じました。
構図の魅力もさることながら、被写体が自身の人生を考え、迷い、時に立ち止まり、前に進もうとする姿を、ファインダーを通して応援しているかのような優しい一枚で目を惹きました。新しい一歩を踏み出す時、後悔や迷いも含めて正解で、そして愛しいものだという事は、その瞬間には気づけないものかもしれません。さまざまな自分と向き合った時間は決して無駄ではなく、未来に待つ“自分自身の正解”に繋がっていくという事を教えてくれるかのようです。この春、新しい一歩を踏み出す全ての人へ、心からのエールを送りたくなる作品です。

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